記念品を、何にするか。
これほど自由度が高く、これほど決めきれないものはない。
購入記念品。試乗記念品。来店特典。呼び方は色々あるけれど、要は「お客様に何か一歩を踏み出してもらった、そのお礼」として渡すものだ。
大勢に配る記念品なら、まだ簡単だ。夏場のうちわ。ポケットティッシュ。単価は100円から500円くらいに揃えて、あまり悩まずに決められる。
難しいのは、もっとハードルの高い行動をしてもらった人に渡すものだ。車を試乗してくれた人。高額な家電を購入してくれた人。その一歩は決して軽くない。それに見合う記念品を選ぶのは、想像以上に骨が折れる。
基準がなければ、あっという間に極端な話になる。「車を買ったらもう一台プレゼントすればいいじゃないか」。冗談のようだけれど、こういう発想は、意外とすぐそこまで来ている。
■ 「自分では買わないけど、もらったら嬉しいもの」
色々な現場でこの選定に関わる中で、私は一つだけ、自分の中でルールを決めていた。
「自分では、わざわざお金を出して買わない。でも、もらったら確実に嬉しいもの」
もちろん、ここでいう「自分」は本当の自分ではなく、その製品を買ってくれるであろうお客様の顔を思い浮かべながら、その人になりきって考える。
あまりに実用的すぎるものを選ぶと、「これなら別に、もらわなくても自分で買っていた」と思われてしまう。逆に、奇抜すぎるものは、ただのゴミになる。この絶妙な線上にあるものだけが、本当に「嬉しい」という感情を動かす。
このルールを決めてから、選定作業が驚くほどシンプルになった。目的と、この一つの基準さえあれば、迷う時間がぐっと減った。
■ 忘れられない、先人が作った「最強の記念品」
これまで見てきた中で、一番見事だと思った施策がある。私が携わる、ずっと前の話だ。
当時、とある出版社が「ゼロから教えるパソコンの使い方」のような指南本を出していた。それをそのまま買って配るのではなく、先人のマーケターは、自社製品の仕様に合わせて、その本を丸ごと編集し直し、専用の冊子として作り上げていた。それを、お客様に無料で渡していた。
これが、本当に強かった。中身が自社製品専用に作られているから、他社のパソコンにこの冊子をつけても、何の意味も持たない。
量販店の売り場は、メーカー側が細かくコントロールできる場所ではない。そんな環境の中で、「この冊子がついてくるから、このブランドを選んだ方がいい」と、お客様に自然に思わせる。これ以上ないクロージングツールだった。
この施策は、驚くほど長く展開され続けた。私自身も、後任としてその一部に関わらせてもらった。専用のキーボードカバーを作ったこともある。営業時代から数えても、あれほどお客様に喜ばれた記念品は、そう多くない。
■ 記念品には、2つの役割しかない
振り返ってみると、記念品が果たす役割は、結局のところ2つしかないと思う。
一つは、ブランドそのものを好きになってもらうこと。ロゴ入りのキーリングや専用グッズのように、純粋に「持っていて嬉しい」と思わせるもの。
もう一つは、競合に勝ち切るための後押しをすること。実用的なアイテムをつけることで、「本来は自分で買うはずだったもの」がついてくるお得感を演出し、最後の一押しにする。
どちらの目的なのかがはっきりしていないまま、なんとなく「良さそうなもの」を選んでしまうと、記念品はただのコストになる。目的から逆算して初めて、記念品は投資になる。
■ 検索すれば出てくる時代だからこそ
今は、ネットで検索すれば、いくらでどんなノベルティが作れるか、すぐに調べられる。昔に比べれば、情報を集めるところまでは、驚くほど簡単になった。
ただ、実務はそこからが本番だ。本当に日本国内で必要な数を確保できるのか。名入れは可能なのか。パッケージの見た目はどうか。細かい条件を一つひとつクリアしていく、地道な作業が待っている。
その大変な作業の途中で、一番見失ってはいけないものがある。「これをもらったお客様が、どう思い、どう行動するか」という視点だ。
市販品をそのまま渡されるより、専用にカスタマイズされたパッケージで渡される方が、誰だって嬉しい。その中身が、買った製品そのものに深く紐づいていたら、なおさらだ。
御社の記念品やノベルティは、「なんとなく良さそうなもの」で止まっていないだろうか。それとも、競合には決して真似できない、自社だけの記念品になっているだろうか。一度、目的から一緒に洗い出してみませんか。
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